Deli★Boy BROS. Hamburger | 永松伸一さん

文:大内理加 (大内商店) / 写真:Shintaro Niimoto (studio SARA)


ワイルドなバーガーマンが
新たなムーブメントの火付け役に

01-187A9309

こだわりのハンバーガーから伝わる職人としての想い

久留米から日田方面へ続く筑後街道沿い。道の駅うきはの真向かいに目を向けると、「Deli★Boy BROS. Hamburger」の看板が目に飛び込んでくる。
のどかな田園風景と対照的にスタイリッシュな建物に惹かれて入り口をのぞいてみれば、カウンターの向こうには鉄板の上に広げられたパンやパテとにらみ合っている永松さんの姿。
冬でも半袖で、ミンチの粗挽きから焼きまでをほぼ一人で黙々とこなしている。一見するとコワモテな印象を持ってしまいそうだが、焼きたてのハンバーガーを渡された時の素朴な笑顔にこちらも思わず頰が緩む。そして、厚さ20cmはあろうかというボリューム満点のハンバーガーを一口齧れば、永松さんの職人気質を感じるだろう。肉も野菜もバンズも、それぞれの食感や風味が埋もれることなく主張している。
豪快に見えて繊細な味わいは、永松さん自身にも似ている気がする。

06-187A9341

趣味について語り合える場が欲しい
そんなきっかけで飛び込んだ出店への道

永松さんは生まれも育ちもうきは市、生粋のうきは人だ。うきはの魅力について尋ねると
「ほどよい田舎感っすかね。自然が多いけど、車なら都会にもすぐだし。何よりこの景色は見ていて飽きない。就職する時も自分がうきはを離れることは頭に無かったですね」
誰よりも故郷を愛する永松さんは商売をするのも故郷でと決めていた。
「若い頃は古いアメ車が好きで乗っていたんです。同じ車好きの友達と集まってしゃべりたいけど、うきはにカフェやバーが少ないのが残念で、じゃあ作ってしまおうと。せっかくだから、うきはに無いもの、じゃあハンバーガーショップをやろうと決めて、東京に修業に行きました」
実はうきはを出たのはその時が初めて、しかも飲食業の経験はゼロと、かなりの思い切りで旅立った。

02-187A9428

出店後は人の輪に支えられる日々。
センスあふれるカフェスペースも完成。

修業期間を2年間と決めて東京へ行ってから、ハンバーガー修業の合間をぬってうきはへ戻り、食材の開発や確保、挨拶回りなどに出向いた。オープンする年の5月に戻り、翌月には店舗営業をスタート。
「最初は資金も無かったから、カウンターだけで営業していました。この道路は阿蘇山までのツーリングコースになっているので、バイカーも結構立ち寄ってくれるし、女性客も多かったですね」
客足が伸びたのを機に、空いた空間をカフェスペースに改装。今や「Deli★Boy BROS. Hamburger」の魅力の一つでもある古材を大胆に使ったカフェスペースのデザインは、吉井町の建築デザイン会社「DECO WORKS」が手がけた。
「自分でも改装に携わりたくて、DECO WORKSさんを手伝って、朝から夜中までぶっ通しで2週間作業しました。ありえない期間でしたが、とても満足しています。DECO WORKSさんは友人に紹介してもらいました。うきはで出会った人は皆いい人ばかりで、ますます好きになるし、人とのつながりがどんどん広がっていくのを感じました」

古い角材を敷き詰めた天井と黄色い壁、UFOのような照明と、「DECO WORKS」が手がけるレトロでスタイリッシュな内観はインテリア好きにも評判が高い。
古い角材を敷き詰めた天井と黄色い壁、UFOのような照明と、「DECO WORKS」が手がけるレトロでスタイリッシュな内観はインテリア好きにも評判が高い。
アーリーアメリカンを思わせるポップなインテリアは遠目からも目立つ存在。
アーリーアメリカンを思わせるポップなインテリアは遠目からも目立つ存在。

黒板に描かれたユーモラスなマンスリーバーガーのイラストも空間に味わいを添える。黒板に描かれたユーモラスなマンスリーバーガーのイラストも空間に味わいを添える。

やりがいを感じながら丁寧に向き合う
通好みの多彩なメニューもこだわり

もちろん、人気に火をつけたのはハイセンスな店舗デザインだけではない。看板商品のハンバーガーは、修業先の店のレシピから大幅にアレンジを加えたオリジナルメニュー。永松さんが一個一個丁寧に仕上げる焼きたての味に胃袋を掴まれ、月イチの限定商品「マンスリーバーガー」を楽しみに通う常連も多い。さらに地元の牛乳を使ったクラムチャウダー、ご当地メーカーが製造するサイダーなど、サイドメニューまで個性的。選ぶ楽しみを突いたラインナップは、うきはを一度離れ、東京で修業したからこそ得た感覚が反映されているようだ。ただし、ハンバーガーをもっと身近に味わってもらいたいと、価格は東京よりも抑え目。
「たまにお皿にケチャップで『ありがとう』とか『ごちそうさまでした』とメッセージが書かれている事があるんですよ。すごく嬉しかったな」
お客さんとのやり取りも永松さんのガソリンになっているという。

創造性が溢れるアイデア満載のマンスリーバーガー。これだけで毎月通うことが楽しみになってくる。
創造性が溢れるアイデア満載のマンスリーバーガー。これだけで毎月通うことが楽しみになってくる。
うきは市にある“松野牧場”のノンホモ低温殺菌牛乳を使ったクラムチャウダー「松野チャウダー」
うきは市にある“松野牧場”のノンホモ低温殺菌牛乳を使ったクラムチャウダー「松野チャウダー」。なめらかな舌触りと深く余韻を残すコクが絶品。この冬のイチオシ商品だ。
カウンターからは厨房をのぞくことができる。
カウンターからは厨房をのぞくことができる。物言わぬ職人の背中と、ちらりと見えるひき肉の鮮やかな色合いに期待がグンと高まる。

イベントに、ビアガーデンに、ライブに
うきはを盛り上げる計画が続々進行中!

一人で調理場を切り盛りする慌ただしい日々ながらも、永松さんは次なる一歩を考え中。
「今取り組んでいるのは、夜メニューです。ご飯ものやステーキなどの食事とお酒メニューを充実させたい。あとはイベント出店ですね。イベントだと子どもからお年寄りまで幅広い年代に知ってもらえるので、今後も力を入れて行きたいすね。あと、去年の夏には店の前でビアガーデンを出したり、田篭にある「イビサ スモークレストラン」さんと一緒にアーティストを呼んでライブやったり、自分たちでもイベントを開催しています。いつかうきは市全体が盛り上がるような大きなイベントを企画したいですね」
真剣に料理と向き合う職人の顔の裏には、地元を盛り上げようと新たなムーブメントを生み出す喜びが溢れているようだ。

11-187A9572
最初はワゴン車で移動販売をするつもりだったので、食材を仕込む場所を探していたそう。
友人が紹介してくれた物件は、道の駅うきはの前というかなりの好物件。
10-187A9464
店舗営業に切り替えて、最初は改装工事を一人で手がけたそう。
ワイルドチョップバーガー¥850
一番人気のハンバーガー。主役のパテは、食感を楽しめるよう手切りでミンチにしたもので、噛み締めるとジューシーな牛肉の旨味が口いっぱいに広がる。バンズは地元のベーカリー「ぱんのもっか」の特注品で、卵を使わずほのかに甘みを残したミルクフランスパン。黒ゴマをまぶして、鉄板で炒めると表面はサクサク、中はふんわりと具材を包み込む。最初は圧倒されるボリュームも、肉を引き立てるシャキシャキとした野菜の食感がアクセントになり、気が付けばペロリと平らげている。
道の駅うきはの展望スペースからの景色は永松さんの憩いの場所。「一面田んぼだけですが、夜は点々と家の灯りが灯ってて。ああ一日が終わったなあって感じで結構落ち着くんすよ。みんな寝るの早いから早くに電気は消えますけど(笑)」
道の駅うきはの展望スペースからの景色は永松さんの憩いの場所。「一面田んぼだけですが、夜は点々と家の灯りが灯ってて。ああ一日が終わったなあって感じで結構落ち着くんすよ。みんな寝るの早いから早くに電気は消えますけど(笑)」
お客さんの話を聞くときに見せる優しい表情が印象的だった永松さん。
お客さんの話を聞くときに見せる優しい表情が印象的だった永松さん。一番苦労した事は値段の設定だそう。食材にこだわるのはもちろん、丁寧に仕込んだゆえの自慢の味だが、まずは気軽に食べて欲しいとの思いから価格は極力抑えている。
店内は昼と夜でガラリと印象が変わる。
店内は昼と夜でガラリと印象が変わる。昼は明るい日差しと木のぬくもりが時間を忘れさせてくれるよう。夜はほのかな照明がテーブルをムーディーに照らし出す。随所にアメリカンな小物をあしらっているのもおしゃれ。
ポップでキャッチーなオリジナルキャラクターは名前がまだ無いとの事。
ポップでキャッチーなオリジナルキャラクターは名前がまだ無いとの事。思い浮かんだ人はぜひ永松さんへ伝えてみては。
店外に停めているワゴンはアメ車好きな永松さんの私物。
店外に停めているワゴンはアメ車好きな永松さんの私物。普段は看板代わりに、イベントなどの出店の時には店舗として使われている。
2週間で店舗改装という超ハードスケジュール達成の記念に撮った一枚が目立たない場所にさりげなく飾られている。
2週間で店舗改装という超ハードスケジュール達成の記念に撮った一枚が目立たない場所にさりげなく飾られている。一緒に駆け抜けたDECO WORKSの面々とは今も親しい付き合いが続いているという。
自慢のハンバーガーに華を添えてくれるのはこの笑顔。
自慢のハンバーガーに華を添えてくれるのはこの笑顔。永松さん一人で始めた店も、1年後には5人のスタッフを抱えるまでに成長した。