囲炉裏カフェ・里楽 | 林和弘さん・礼子さん夫妻

文:高木亜希子 (あきこ商店) / 写真:KOZI Hayakawa (CUBE ART LAB.)


ものがたりの始まりは、茅葺屋根の家との奇跡の出会い

浮羽町・ひめはる地区。初夏には蛍の群舞が美しく、冬には風花が舞う、清流が流れる山間の集落に、林さん夫妻が営む「囲炉裏カフェ・里楽」があります。

冬の里楽
冬の里楽

黒板に書かれたメニューには、地元・うきはのお茶や棚田米、林さんがご夫婦で育てた野菜や果物など、里山の豊かな恵みを活かしたお料理が並びます。

妻・礼子さんお手製の猪肉を使っただご汁
妻・礼子さんお手製の猪肉を使っただご汁

林さん夫妻はもともと揃って関東出身。偶然、夫・和弘さんが田舎暮らしに関する雑誌の見本誌を手にしたことがきっかけで、この茅葺屋根の家と出会いました。いわゆる「一目惚れ」でした。

最近は、こうした葺替えを出来る職人さんも少なくなっているそうです(林さん撮影)
最近は、こうした葺替えを出来る職人さんも少なくなっているそうです(林さん撮影)

屋根の葺き替えや壁塗りなどの改修の目処がつき、本格的にこの家に住み始め、移住がひと段落するまでの間に、礼子さんは妊娠、出産。元気でかわいらしい男の子のお母さんになっていました。

地方では、人のつながりが支えとなり、新たな縁を生む

「この建物自体が古くから伝わっていて、改修については規制も色々とありました。最初は2人で頭を抱えていたんです。そんな時、地域の方に伝建地区で活用できる補助金や、共同井戸を掘る事で活用できる補助金について教えていただいて。井戸については、「一緒にやろう」と声を掛けていただいて、共同井戸を掘りました。家の購入と改修で費用がかかり、店舗開業には絶対に必要なのに井戸をうちだけで掘るっていうのは厳しくて。本当に助かりました。皆さんのおかげです。」

当時を語る礼子さん
当時を語る礼子さん

現在、店の切り盛りは、礼子さんが店長として行い、和弘さんは家から歩いて数分の小学校に勤務しています。ちなみに、この用務員の仕事も、地域の方から「こげな求人が出とるよ~」と教えてもらったことがきっかけです。

「気に掛けてもらっていることが本当にありがたいです。人情に助けられています。」と、地域の人々に支えられている事を実感する毎日です。

夢を諦めない。一歩でも前へ進めたら、何かできる。

さて、地域の方々との繋がりに支えられて始動した里楽ですが、現在、直面している課題も。それは、世の大勢の仕事を持つお母さんが直面する「子育てと仕事の両立の難しさ」。礼子さんは、小さな息子さんをもつ母であり店長なのです。

夏、ブルーベリーの収穫のお手伝いを頑張る(!)息子さんの微笑ましい後ろ姿。
夏、ブルーベリーの収穫のお手伝いを頑張る(!)息子さんの微笑ましい後ろ姿。

息子さんはまだ小さく、お母さんに沢山甘えたい一方で、どんどん活発になる年頃です。とは言え、お客様がいらっしゃる時は、「店長」である礼子さんが始終相手をする事はできません。そこで、平野部の保育園へ入所、どちらかが、車で送迎をしています。お2人とも、小学生に上がるまでは、力をあわせて育児とお店の営業の両立をもがく事が続くだろうと覚悟しているそう。

「育児や家事・・・やらなければいけない事は確かにあります。男性は、ストレートに夢を追えるから、羨ましいと思います。でも、子育てしながらで例え歩みは遅くとも、出来ることが幸せ。ちょっとずつでも前へ進めたら、何か出来ると思っています。」と礼子さんは教えてくれました。

子育てと仕事の両立は、働くお母さん共通の悩みです
子育てと仕事の両立は、働くお母さん共通の悩みです

言葉を1つ1つ選びながら、礼子さんの話が続きます。

「うちの場合は、核家族で近くに頼れる身内もいないので、両立は時には難しいかもしれません。けれど、息子には、一生懸命働く親の背中を見ながら、育っていって欲しいです。もがきながらでも、頑張ろうと思っています。」

さて、お店のことですが、新たな課題も見つかりました。茅葺屋根の古民家ゆえ、冬にはとにかく寒いのです。そこで、「冬季は予約が入った場合のみ営業」というスタイルに切り換え、焦らずに「加工品作りに取り組む期間」と考えるようになりました。まずはPR商品としてオリジナルの加工品を作り、店頭で販売する以外に、卸販売も始めています。最近は、近くの旅館にも置いてもらえるようになりました。

じわじわとファンも増え始めています。
じわじわとファンも増え始めています。

礼子さんは「素敵なものが沢山あるうきはの美味しさを、もっと伝えていきたいです!」と、新たな加工品作りにも前向きに取り組んでいます。今後は「食べるだけでなく、1日ゆっくりと楽しく里山を体験してもらえるような、お客様とひめはるが出会ってもらえるようなお店」が最終的な目標です。

お店入り口の前で。
お店入り口の前で。

「無理をせず、自分たちで出来るペースでお店を育てていく」を選んだ林さん夫妻の起業の仕方。
ゆったりに見えて実は忙しい、けれど、それが楽しい里山暮らしの日々が続きます。