みうら建設 | 三浦 誠剛さん

文:大内理加 (大内商店) / 写真:Shintaro Niimoto (studio SARA)


先代は偉大な存在であり、永遠のライバル
時代のニーズに合わせた家づくり

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職人の世界を一変させた2代目社長が
おしゃれでイマドキな工務店を築くまで

こだわりの雑貨が並び、おしゃれなインテリアショップと見紛う事務所。2代目の三浦さんもキャップにデニムシャツ、グリーンのブルゾンとこれまたおしゃれな出で立ちだ。店内に並ぶ三浦さんの似顔絵をあしらったバッジやコースターもいい意味でのユルさを醸し出している。
先代は建設会社「三浦建設」として、一般住宅から宮大工まで手がける腕自慢の職人集団。息子である三浦さんの代になった今ではそんな硬派な印象とは打って変わって、尋常じゃない親しみやすさが漂っている。実はこの空気感こそが、三浦さんが人間関係に揉まれ揉まれて、戦いながら得た2代目としての意地とプライド、そして家業への愛なのだ。

山のふもとにある事務所は隠れ家的な存在。目立つ場所じゃなくて、あえて「探してください」な工務店にしたいという意図がある
山のふもとにある事務所は隠れ家的な存在。目立つ場所じゃなくて、あえて「探してください」な工務店にしたいという意図がある
ナチュラルなショップ兼事務所には、インテリア雑貨や家具、植物などがずらり。奥にはカフェのような打ち合わせ用スペースがある
ナチュラルなショップ兼事務所には、インテリア雑貨や家具、植物などがずらり。奥にはカフェのような打ち合わせ用スペースがある

都会に疲れてうきはへUターンすると
待っていたのは経営者としての修業の日々

「工業高校の建築科を卒業して2年間中国に語学留学、その後東京の建築材料の会社に就職しました。それも実家を継ぐなんて考えていなくて、ただ都会に行きたかっただけという理由。でも憧れの東京で暮らしたものの、持病のアトピーは悪化するし、満員電車にも嫌気がさして。ちょうどその時、親父も弱っていたのか『もうしきらん、帰ってこい』と言い出したので、とりあえずうきはに戻ったんです」
 療養のつもりで帰省した所、早々と職人見習いに出され、そのうちお父様について経営を引き継ぐようになった。さらに、知らないうちに商工会の青年部にも入会させられていた。一本筋が通った職人と個性派ぞろいの商工会の面々、そしてあの時の弱気はどこ吹く風の先代・お父様に囲まれて、三浦さんの戦いの幕が上がった。

材木を加工する工房。市場にもなかなか出ない巨木の一枚板なども収蔵されており、木目の美しさと木の香りに魅了される。ここでは、オリジナルの棚なども製作している
材木を加工する工房。市場にもなかなか出ない巨木の一枚板なども収蔵されており、木目の美しさと木の香りに魅了される。ここでは、オリジナルの棚なども製作している

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現場でのぶつかり合いの末に掴んだ2代目の地位
自分の仕事への迷いの中でたどり着いた思い

現場で一緒に働くのは、お父様の弟と兄弟子にあたる大ベテラン。お父様も息子が心配なのか現場に来る事が多かったそう。
「最初の方はかなりの葛藤がありました。昼に僕がお客さんと打ち合わせをして進めていたら、夕方、僕がいない時に親父が現場に来て別の指示を出すから、職人さんがどっちに従えばいいか分からんって怒って。その時期は親父と取っ組み合いの大げんかはしょっちゅう。結果的に僕が親父を追い出した形になったんですよ。だから僕は何があっても泣きつけない」
 実質2代目になったものの、先代より良くなって当たり前、悪くなればそれこそ攻撃の矢面に立たされる。そんな時、何気なく参加した商工会青年部の研修旅行で転機が訪れる。
「京都の商工会との意見交換会で普段の悩みをぶつけていたんです。そしたらその後、うきはのいいところを聞かれて答えたのですが、京都の人に『うきははそんなにいい所がたくさんあるのに、なんで悩んでいるの?』って言われて。その一言がグサッと刺さったんです。せっかくの魅力も生かせずにいる」
 それは商工会でも仕事でも言える事だった。

ドアノブやフック、照明などの建築雑貨も売れ筋。建築関係の問屋に加え、アンティークショップからも集めているため、珍しい商品も
ドアノブやフック、照明などの建築雑貨も売れ筋。建築関係の問屋に加え、アンティークショップからも集めているため、珍しい商品も

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「お客さんの建てたい家を建てる」
新たなモットーで進める経営改革

 そこで、うきはで頑張るしかないと腹をくくった三浦さん。住宅事情も先代の時のように職人のおまかせで自由に作り上げるやり方ではなく、お客さん側の要望に沿った家作りがスタンダードになってきた。さらに、最近の建築業界は意外に流行のサイクルが早い。いい仕事ができればお客さんがくる時代はもう終わった。今後は職人といえども柔軟な対応力と営業力が必要となる。そんな荒波の中、三浦さんは時に職人と意見を戦わせ、試行錯誤を繰り返しながら前に進もうとしていた。その一つが事務所に併設したショップだ。
「雑貨の売り上げが目的ではなく、工務店の敷居を下げたかったんです。手にしやすい雑貨と一緒にリフォームの価格表やポップなパンフレットを作って設置してみたら、成約率が増えました」
 さらに、DIY人気を受けてショップでも建築雑貨を充実させ、端材市やDIY教室を開催したいと新たな意欲を燃やしている。

入り口には「MIURA YA‘S HOME」のロゴを。ドアの大きさはわざと大きさを変えている「ショップは実験的なデザインを取り入れています。内装の白壁も全部白に見えるけど、ちょっとずつ違うんですよ。入り口のドアなんて親父が見たら激怒するかも」
入り口には「MIURA YA‘S HOME」のロゴを。ドアの大きさはわざと大きさを変えている「ショップは実験的なデザインを取り入れています。内装の白壁も全部白に見えるけど、ちょっとずつ違うんですよ。入り口のドアなんて親父が見たら激怒するかも」
「雑貨のセレクトは女性スタッフに任せていたら、いつの間にかこんなグッズが出ちゃって(笑)このタイルは後輩が作ってくれました」
「雑貨のセレクトは女性スタッフに任せていたら、いつの間にかこんなグッズが出ちゃって(笑)このタイルは後輩が作ってくれました」
三浦さんがイラストを手がけたオリジナルTシャツ(1枚2500円)。軽トラのイラストがスタイリッシュ
三浦さんがイラストを手がけたオリジナルTシャツ(1枚2500円)。軽トラのイラストがスタイリッシュ

新たな課題は次世代の育成
先代の屋号を受け継ぎながらも前へ

自分より年上の先達に揉まれてきた三浦さん、次なる相手は未来を担う若者だ。
「自分も歳を取るし、いつまでもこのままではいられないから、若い世代の育成も考えておかないと。今はなるべく現場に立ち会わず、若い子に出てもらっています。僕のように人の摩擦の中で成長してくれれば」
 時には言い方を考えながら諭したり、グッとこらえたりする事も。今では、年上の人と話す方がずっと楽だ。でも、それは三浦さんが通ってきた道があったからこその話。
「うちの親父は今でも僕がやっている事は理解できないみたいです。『あいつは何ばやっとるとか』って言われる。でも、僕はむしろ褒め言葉だと受け取って、真逆の事をやってやろうと思います」
 そうは言いながら、優しい表情を見せる三浦さんの中にお父様が持つ情熱が息づいているのを感じる。三浦さんが新たに作ったロゴの「MIURA YA‘S HOME」は、お父様の口癖「みうら屋」が由来だ。

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うきはの地神でもある「浮羽稲荷神社」はパワースポットとしても有名。三浦さんの事務所からも山に連なる赤い鳥居が見える。「初詣には毎年お参りしています。歩いて登るといい運動になりますよ」
うきはの地神でもある「浮羽稲荷神社」はパワースポットとしても有名。三浦さんの事務所からも山に連なる赤い鳥居が見える。「初詣には毎年お参りしています。歩いて登るといい運動になりますよ」
休日は登山とバイクでリフレッシュ。自宅のガレージにはオレンジのペイントがシブいオフロードバイクなど2台
休日は登山とバイクでリフレッシュ。自宅のガレージにはオレンジのペイントがシブいオフロードバイクなど2台
親父からは角刈りで作業着にしろと言われていますが、僕は逆のことをしてやれと、パンツにキャップのスタイルを貫いています。似顔絵のイラストが浸透してきたので、今ではそっちに寄せてますね(笑)
親父からは角刈りで作業着にしろと言われていますが、僕は逆のことをしてやれと、パンツにキャップのスタイルを貫いています。似顔絵のイラストが浸透してきたので、今ではそっちに寄せてますね(笑)