ジャパンメイドの逸品も、地域資源も
知られざる魅力を全国へ発信したい

Case.6

中村ご夫妻
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生活購買店 reed
文:大内理加 (大内商店)
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写真:Shintaro Niimoto (studio SARA)

あなたのストーリーを喚起する
「日本のいいもの」を集めた空間

昭和の色合いを残したレトロなビルの階段を上がっていると、入り口から赤い鉄骨の梁を生やした無骨な天井がちらりと見えた。エッジの効いたお店かなと思いながら入り口にたどり着くと、その天井に白木の棚、畳のコーナーなど和を感じさせるアイテムが意外にもなじんでいて、店主の中村さんのセンスの良さを物語っている。ここ「生活購買店 reed」の店内を見渡せば、かわいらしい豆皿や肌触りの良さそうなタオル、素朴なラベルのお菓子など、実に多彩な雑貨が並ぶ。どれもシンプルだけれど洗練されていて、一つ一つ手に取ってじっくり眺めると、自宅のどの場所に置こうかとか、あの人に贈ると喜ぶかもとか、そんな空想が膨らんでくる。ふと顔をあげると、中村さんご夫妻の笑顔と白壁の景色にホッとして、思わず時間を忘れて長居してしまう。ここは、時間が無い時には来ない方がいいお店かもしれない。

看板と同じく木製のドアは、古レンガが醸し出す昭和の佇まいの中に新鮮な味わいをもたらす。思わず開けてみたい気にさせる。

入口を通ってすぐの階段から2階の店舗へ。無骨なアイアンによるインダストリアルなイメージは、階段を上がりきると裏切られる。

すっきりとした印象ながらも、コーナーごとに発掘する楽しみを残した陳列スタイルはさすが。中央にはイベント用の畳コーナーも。

「上質ながらも親しみのある商品を」
店舗経験を積みながら育んだ将来のビジョン

衣食住と種類豊富な「生活購買店 reed」の商品たち。
「日本のものを中心に日常で使いやすいものを選んでいます。デザインがとんがっているものや価格が高すぎるものではなくて、買いやすい価格で使って心地いいもの。あとは、大きなメーカーではなくて、中小とか個人でやってらっしゃる所の商品をできるだけ選ぶようにしています」
と語る中村さん。子供の頃からインテリアや雑貨が好きで、社会人になる頃には「自分がいいと思うものを紹介したい」と出店の夢を抱くように。無印良品、ウィークスなど都心で人気の雑貨店に10年以上勤める中で、店のコンセプトや扱う商品についてのイメージを具体化していった。満を辞して独立したのはオープンの1年前。まず悩んだのは、物件探しだった。

白壁の町で一際目を引く昭和レトロなビル。なんと、元魚屋だったとか。店舗は2階にあり、1階にはminou books&cafeが入っている。

商品は定番を7割、残3割を季節に応じて変えていく。「お客さんとのやりとりでどんどん変える」という方針。

売れ筋の豆皿は有田焼など約60種類と豊富。どれも甲乙つけがたいかわいさで迷うこと間違いなし。一枚1000円前後と価格も手頃。

不安材料が来店者にとっての魅力に。
地域との交流が新たな動きを生み出す

「初めは都心を候補にしていましたが、昔から大好きでいつも遊びにきていたうきはにも惹かれて。とはいえ、お客さんの量など不安な点があったので、何回も足を運んで市場調査を重ねました。この場所は、minoubooksの石井君に教えてもらったのですが、いいなと思いながらもまだ迷いがあって、会社時代の上司に見に来てもらったりして」
オープンしてから3ヶ月、不安を抱いていたこの土地の景色が、今では新たな刺激を与えているという。
「店内だけではなく、外の景色を含めて、居心地いいと言ってくれるお客さんが多いのが嬉しいですね。今は市外のお客さんが多いですが、近所のおばあちゃんがお友達を連れて来てくれたり、『お兄ちゃん、これどがんね?』って買ってくれたりとか、地域の組合で一緒にご飯食べたりだとか。地元の方との交流は今まであまり経験が無かったので新鮮でした」

優しい味わいで食べ始めると止まらない【重岡豆腐本舗おからのかりんとう】など、うきは商品もじわじわと人気に。現状は福岡や久留米、日田など市外から来る人が多いので、今後はもっとうきは商品のラインナップを増やす予定。

お客さんに会う度に嬉しそうな笑顔を見せる中村さん。常連客だけではなく、初めて来たお客さんとの会話にもヒントが眠っている。

店の東側には住宅地が広がり、賑やかな通りを上から眺めることができる。また、開店前の時間帯は朝日に包まれた町の景色も楽しめる。窓際に設置されたテーブルセットやソファーに腰をかけて休憩する人も多く、常連客の密かな憩いの場所でもある。

初めての土地でも変わらぬ夫婦善哉。
日常も夢も共有しながら前へ

好きでよく通っていたとはいえ、うきはに定着したのは初めて。しかも大手の雑貨店でバリバリ働いていた中村さんの出店にずっと寄り添い続けた奥様はどう思ったのだろう。
「結婚するタイミングで将来お店を出したいと聞いていて、うきはに来るのは二人で決めました。割と昔から一緒に出かけていた土地で私も好きだったから。自然が豊かで…」
そこで、旦那さんの合いの手が入った
「仕事中よく抜け出して花取ったりしてるもんね(笑)」
「そうそう。お店に飾る花を取りにね。お店には、なるべくうきはの花を飾るようにしたいと思っているんです。お店以外でも結構満喫していますね」
あうんの呼吸で通じる二人は、見ている方向も一緒。今後の展望を尋ねると、二人とも同じ答えが返ってきた。

自然が大好きな奥様は、桜が美しい流川や調音の滝、田子森など山手の景色にも癒されているそう。「お店以外でも満喫しています」

お花好きな奥様によるちょっとしたあしらいも、店の雰囲気作りに一役買っている。

「商品構成はまだ固定していないです。今もずっと考えています」ホッと一息つく時も次のへのアイデアに頭を働かせているそう。

地域とのつながりで再確認した
うきはの魅力を全国に発信したい

「うきはは、街中にいろんなお店があったり、作り手さんがいらしたり、地域資源がたくさんある土地なので、一緒にうきはをアピールするイベントや情報発信をやっていきたいですね。ただ物を売るだけで完結するんじゃなくて、地域で交流を結んでいければいいなと思います」
初めてこの土地に飛び込んだ二人を後押ししてくれるのは、白壁や筑後川や耳納連山、そして個性的な住人が織りなす、この土地ならではの風景だ。丁寧に作られたジャパンメイドの商品とその向こう側に見える景色は、とてもしっくりと馴染み、何気ない日々の暮らしが愛おしいものであると気付かせてくれる。

日本のいいものを揃えたいというコンセプトに沿って、デザイナーと相談しながら商品がより引き立つようにシンプルなインテリアに。左官さんが仕上げた土塀が特にお気に入りで、さりげなく和を感じるアクセントになっている。

合わせやすく肌なじみの良い衣服やストールも人気のコーナー。明るいカラーでもベーシックなデザインなので挑戦しやすい

通り沿いに出されている木製の看板は、迷う人も多い2階への入り口の案内役だ。シンプルな書体が木目に映えて、目を引く。

「今後はいろんなイベントをやっていこうかと思っています。特に日本文化に関わるフェアやワークショップを企画したいですね。お茶の事だったり、水引の事だったり。作家さんと一緒にワークショップしていければいいなと思っています」

【お店からのお知らせ】
うつわ、竹かご、グラス、衣服。
毎日の生活の中で暮らしに寄り添ってくれる道具やモノを紹介しています。
お店の窓からは白壁の街並みもきれいに見えるので、
ぜひ、ふらりとお立ち寄りください。

最新情報は、facebookページとインスタグラムをご覧いただければ幸いです。

<店舗情報>

店名:生活購買店 reed

WEB:https://reed-life.com
FB:https://www.facebook.com/life.reed/
Instagram:https://www.instagram.com/r_e_e_d_/

住所:うきは市吉井町1137 -2F
TEL:0943-76-9480
営業時間:11:00〜17:00
定休日:火曜、第3水曜