ジビエ肉・ひと・街がつなげて
人と自然がもっと共存できる世界をつくる

Case.29

國武淳一さん
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ウキナナ
文:西村里美(H&Her.)
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写真:Suzuki Akiko

耳納の山を分け入った集落に
これからのジビエ肉の解体加工施設

耳納連山に向かって山道を進み、藤浪ダムを渡ってさらに山あいへ。
初めて訪れる人ならば、この道でホントに正解?とちょっぴり不安になる。そんなタイミングで小さな集落の屋根の向こうに見えてくる、かわいい動物のキャラクター。クマでもない、イノシシでもない。不思議な愛嬌が満ちている。「ウキナナ」のオリジナルキャラクターだ。

-施設の正面に大きなキャラクター、おもわずほっこり-

 

「何者なのか分からない生きものがいいなと、デザインしてもらったんです」

とは、鳥獣食肉解体加工施設「ウキナナ」を運営する國武淳一さん。穏やかで、ていねいに言葉を選んで話してくれる様子がなんとなくキャラクターとも重なり、自然とほっこりしてしまう。

-笑顔で出迎えてくれた國武さん-

「ウキナナ」がうきはの中山間部である妹川・持木地区に開設されたのは2022年の春。その役割は、うきはと周辺エリアで害獣として捕獲されたイノシシやシカなどを引き取り、おいしく食べられる“ジビエ肉”に解体・加工すること。全国的に見てもまだまだ数が少ない、民間経営の加工施設でもある。民間ならではのフットワークの軽さで、中山間部の“これから”まで描いていきたいという。

心からやりたい仕事に出会った
持木地区のみなさんの熱いサポートにも感謝

イノシシやシカによる獣害が増えているうきは。田畑や果樹園を荒らされる農家さんも、罠をしかけて被害を食い止めたいと切実に考えていた。しかし、捕獲した害獣を食肉に加工するには、相応の資格や技術が必要だ。食肉にできなかった場合は、山に埋めるなどして土に返すという、大変な作業が待っている。

獣害をおさえたい、でもできない。そんなよくない循環を「いい循環に変えいきましょう!」と手をあげた人がいた。「ウキナナ」の國武さんだ。以前より農家の友人と狩猟に取り組んでいたので、獣害についての知識は持ち合わせていた。

 

-地域の方々と協働で獣害に取り組む-

知り合いからは「きっと大変だよ」と心配されたが、もともと自分の仕事が誰かの役に立つのがよろこびだったという国武さん。これまでの「害獣」を「自然のめぐみ ジビエ肉」に変換できれば未来が開けるんじゃないか。心のなかには確信が芽生えていた。

 

-解体作業の様子-

 

「ダメと言われたらやりたくなる性分で(笑)。うきはの事業者募集に迷わず申し込みました」

開設までは紆余曲折あったが、困った時に手を差し伸べてくれたのが妹川・持木地区のみなさんだった。

「今『ウキナナ』がある場所は栗林でした。それを地主さんが『ここに建てていいよ』と貸してくれて。うきはの人は協力し合う気持ちがすごく強い。『ウキナナ』ができたのも、地域のみなさんが自分のことのように力を注いでくれたおかげです」

農家さんの困りごとを減らして
狩猟やジビエ肉に関わる若者を増やしたい

「ウキナナ」の開設後、イノシシやシカの引き取り手がいるならと罠をしかけてくれる人は順調に増えた。開業1年目の秋には獲れすぎて手が回らなくなったほどだ。

「民間ですから、早朝・夕方でも臨機応変に対応できるのが強みです。仕留めて1時間以内に処理をスタートするのがおいしいジビエ肉に加工する鉄則ですから」

-清潔な加工スペースで日々作業がおこなわれる-

 

國武さんは「『ウキナナ』を続けていくことで農家さんの困りごとが減って、狩猟やジビエ肉の世界を志す人が増える。そんな循環も生まれたらいいなあ」と“これから”に思いをめぐらせる。

また、狩猟やジビエ肉に興味をもつ若者は全国各地に存在し、野生動物と共存せざるを得ない地域ではそんな若者を求めているという。「いつか『ウキナナ』で身につけたノウハウをまとめて、施設やってみたいと考える方々に伝授したいですね」。

日本のあちこちの中山間部に、第2、第3の「ウキナナ」が登場する未来もそう遠くないのかもしれない。

「いのちをいただく」のは日常じゃない
それがいちばん、伝えたいこと

日々、狩猟と向き合う國武さんは「いのちをいただく」という気持ちを忘れた日はない。先日はお母さんイノシシとウリ坊の家族に出くわした。愛するわが子の子育てとも当然、重なる。
「いのちをいただく」ことを日常のことにはできない。仕事だからといって当然とは思えない。それが國武さんの狩猟なのだ。

「せっかくいただいたいのちのリレーです。できる限り、つないでいきたい。ですから余った脂も料理に使い、骨でスープをとっています。人間が食べにくい部位もなるべく捨てずに、ペットフードをつくっているんですよ」

シカの角を加工したキャンプグッズが好評だったり、大学生から「廃棄予定のシカの革でグッズをつくってみませんか?」と誘われたり。新しい動きも出はじめている。ジビエ肉を中心に広がるストーリー。うきはから九州へ、全国へ。少しずつでもいい、強く、永く、つなげたい。
その応援のためには、そうだ、まず、おいしいジビエ肉をいただくことからはじめよう。

-ジビエ肉の商品パッケージを手に-

 

店頭で販売しているジビエ肉のパッケージはこちら 

【お店からのお知らせ】
◆ ウキナナのジビエ肉は「道の駅うきは」耳納の里」「道の駅くるめ」で販売中。
◆ウキナナ施設での購入希望の方は事前予約をお願いします。
「ウキナナ」のオンラインショップでも購入可能です。

【直近のイベント出店】
◆ 2023年4月9日、「ウキナナ」のある持木地区で「竹の子まつり」が開催されます。

【うきは 自然のジビエ肉 ウキナナ】
住所:福岡県うきは市浮羽町姉川1454
TEL:090-2196-4836(受付時間10:00〜16:00)
URL:https://ukinana-gibier.com